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2008年4月23日に那須高原で出会った運命の猫ボンちゃんとの共同生活そのときどきの出来事や想いなど綴ってます。


by holyluck
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戒め

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悲しみの淵にいる人に声をかけられなくなったのはいつからか…


20年近く前のこと。
新卒で入った職場の上司が50歳を前に癌が見つかった。
奥さんと一人娘さんがいて家族を大切にしていた。
病が見つかるまでは、職場のスタッフで登山や旅行や飲み会やと
あちこちに一緒に出掛けみんな可愛がって貰っていたんだ。

原発の大腸癌は手術できて回復祝いをしたけれど、
転移再発して再び戦いがはじまり状態があまりよくない頃に、
仕事のことを確認しなければならず電話をした。
その電話口に出た上司に「お体は大丈夫ですか?」と言った途端、
「大丈夫なわけないだろうっ!!!」と声を大きく荒げて返された。
いつも温厚でジョーク好きの笑い声が聞こえるような上司の豹変ぶりに
びっくりして言葉を失い次の言葉や用件が口から出なくなり、
近くにいた後輩に電話を代わって貰ったのだったか。
電話を終えた後輩と二人泣いたっけな。

あとから「あれはキミだからつい言ってしまったんだ」と
数人を通して何度か聞かされた(本人もかなり反省したらしい)が
返す言葉が見つからないまま
再び会うことも出来ないまま
帰らぬ人になってしまったのだった。

それ以来、不安や恐怖や悲しみを抱えた人に声をかけるのがこわくなった。
おいそれと「頑張って…」「大丈夫?」「わかります…」なんて言えなくなった。
仕事がらどうしてもそういう人に会うことが多いけど、
そういう言葉は選ばないようにして違う切り口を探している。

最近も知り合いが二人続けて大切な猫ちゃんを亡くした。
何か言葉をかけたかったけど、どんなお悔やみも祈りも言葉に出来なくて
ただひとり沈黙して祈るのみだった…

過去は過去のことだっていうのは分かっている。
あの時上司は沢山のおしつけがましい言葉や励ましに辟易していたんだろう。
たまたま私がそのタイミングに声をかけてしまっただけ、
私だから受け止めてくれると思って言ってしまっただけ。
それだけかもしれない。
でもうっかり何も考えずに声をかけてしまったのは事実。
想像力の欠如した挨拶程度の気遣いと見破られたから
実は自分がそのことをよく知っているから
あのひと言は能天気な胸に突き刺さったまんま。

戒めってやつ。

だから私はやっぱり沈黙を選ぶ。
私自身は誤解されてもいい。
自分の発した言葉で他人を傷つけたくないんだ。
by holyluck | 2017-08-27 21:47 | ひとりごと | Trackback | Comments(0)